2012年5月14日月曜日

キクの話


母の日という特需もあって、カーネーションは切花売上げ第2位であると書いた。

で、堂々の一位はなんといってもキクである。

最近はスプレーマムなど、いわゆる洋キクも普及してきて、一般家庭でも人気にはなっている。
しかしキクの最大の需要は仏花としてであろう。

決して茶化すわけではないが、景気や社会情勢に左右されず人は寿命を全うする。
故人を弔うときに、費用をかけずに簡便にという動きはあれども、葬式は出すだろうし、花もたむけるだろう。

そのときに使われるのはなんといってもキクが王道なのである。

実は先月、とあるセミナーにて葬儀屋さんのお話を聞く機会があった。
葬式ということで、日頃は表立って話題にすることははばかれるが、この日はかなりざっくばらんにお話を伺うことができて大変勉強になった。

最近はキク一辺倒から、彩のある花を使う方向へとシフトしてきているらしい。
さらに予算もかなり絞られているので、ひと昔まえとは葬儀事情は随分違うようだった。

最後に葬儀の花祭壇のデモンストレーションをみせていただいた。

デモなので祭壇の半分だけ。

この祭壇を作る若い男の方の手際の良さにすっかり呆気にとられてしまった。

斎場では一日に数件の葬儀が行われるので、限られた時間でテキパキと祭壇を作ることは必須なのである。

男性は花を数本抱えて、適当なところで茎から葉をしごき落として、適当な場所で茎を手で折ってオアシスに差していく。

あれよあれよとナチュラルな曲線を帯びた花のうねりが出来上がっていく。
この男性は、ものさしを使ったり、水糸をひいたりするわけではなく、まったくの感覚で花を差していくのだ。

作業を開始してから1時間もしないうちにスゴイ花祭壇の半分ができてしまった。
こんな技術、世界のどこ探したってないだろうなぁ。

下に時系列的に写真を並べてみた。

ちょうど壁掛け時計が見えるので、時間の経過と作業の進行を見ていただきたい。
スゴイなぁ、ほんとに。

これだけの祭壇を作るのにいったいキクを何本使うのだろうか?
道理で切花売上げナンバーワンなはずである。










4 件のコメント:

tomaco さんのコメント...

いつも楽しみに拝見しています。
本当に、凄い早業であり、素晴らしいディスプレーですね。最初の写真から、最後の仕上がりが想像できませんでした!!

花咲ジジイ さんのコメント...

tomacoさん

いつもコメント有難うございます。

そうなんですよ、ものスゴイ技術だと思います。

こうやって見ると、葬儀に参列したとして目のやりどころが違ってきますよね。

じゅんぺい さんのコメント...

言われてみれば身近なところにある「花にまつわる話」ですねえ。

それにしても、すごい技。流れるような曲線がみごとです。下段の小さな花は絵画で言えば輪郭をぼかしているし、青味の色合いが水辺みたいです。これは職人技と呼んでよいのでしょうね。

ガーデニングも趣味を超えて芸術の域に達しているものが多いと思いますが、一方で、商売、職業でこうして植物をアレンジすることも、その作品だけを取り出してみても、またその仕事の的確さや制約の多い中での完成度をみると、ある意味で芸術と呼べそうです。どちらもヒトの生活を潤したり安らぎをくれる。

自分がいつか行く天国とか浄土とか、彼岸の世界は、好きな花に囲まれていてほしいなあと思いました。

花咲ジジイ さんのコメント...

じゅんぺいさん

コメント有難うございます。

そうですね。
花より団子は現世のことで、あの世では花に囲まれて上品にいきたいものです・・・