昨日は 「タネツケバナの実が裂けてタネがはじけ飛ぶことでタネをより遠くへやろうとしている」 とご紹介した。
今日も引き続きタネの話。
今、道路脇などで見かけることができるオレンジ色の花びらといえばコレ。
ナガミヒナゲシ Papaver dubium である。
オレンジ色の花びらが薄くて光に照らされて輝くさまはなんとも繊細な感じがする。
でもそれで終わってはいけない。
良く見ると面白いというか、スゴイことがあるのだ。
花を見れば4枚の花びらがあって、中心部にひとつの大きな雌しべ、沢山の雄しべがあることが分かる。
花はじきに終わってしまうと、いわゆる芥子坊主(けしぼうず)が残る。
これは誰でも見たことがあるだろう。
今日はこの芥子坊主にスポットライトを浴びせてみたい。
花びらが散ったばかりの芥子坊主はまだ緑色をしているが、時間の経過とともに少しづつ茶色を帯びてくる。
なるほど色が変るのね とそれだけで見切ったと思ってはいけない。
もっとよく見てみると、芥子坊主の上部は緑色のときは 「閉じている」 のだけど、茶色く熟してくるとパカッと窓が開くように開いているのが分かるだろうか?
芥子坊主のなかにはおびただしい数のタネが入っていて、熟して頃を迎えると芥子坊主の上部の窓が開いてタネがこぼれ落ちる仕掛けになっているのだ。
おびただしいってどのくらいかというと、1000とも2000とも言われている。
茶色くなった芥子坊主を振ってみれば、ぽろぽろと細かいタネがこぼれだす。
大きさは本当に小さい。
ケシ粒 という言葉があるでしょ。
タンポポの綿帽子には200くらいのタネがついているのだが、ナガミヒナゲシはその10倍くらいのタネがひとつの個体から生まれるのだから、生存競争戦略においてはまず数で優位に立っている。
では、どのようにして遠くへ運ばれるのか。
芥子坊主はたいてい長い茎の先についている。
茎は細長くて風に揺れるが、しなやかで折れることは少ない。
そうすると風で茎がしなったときに、こっちでポロポロ、あっちでポロポロとこぼれ落ちるので親株があった場所よりはいくらか離れることが出来る。
さらにしばらくすると芥子坊主そのものがポロリと茎の先端から落ちて転がったとしたら・・・。
風でしなった程度では芥子坊主の中のタネが全てこぼれ落ちるようなことはない。
芥子坊主が地面に落ちた後も、芥子坊主が風で地面を転がったり、動物に蹴られたりするたびに、あっちでポロポロ、こっちでポロポロとタネをバラまくことになる。
熟してある程度タネがこぼれたと思われる芥子坊主を半分に切ってみた。
中は真っ黒のタネがビッシリ残っていた。
では、まだ青い実はどうだ?
エイヤ、と半分に切ってみる。
ぞっとするくらいの数の白いタネの子供たちがスタンバっているのが分かるだろうか。
雑草魂なんて言葉で軽く片付けてはいけない。
彼らの生き残りのための戦略はハンパではないのだ。
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