2012年12月3日月曜日

脇の話 その1


浮世離れした2週間は終わった。

溜まった仕事に取り掛かるなど、待ったなしの現実に戻るべく四苦八苦である。

それはそれとして。

2週間、英国人と我が国日本をまわってみて、改めて気づかされたことがある。

なんでそもそも彼らがやってきたのか?

それはウィルソンが100年前に日本の植生など見てまわったという記録があるから。

まぁそれはそうなんだけど、じゃぁなんでウィルソンははるばる日本にまでやってきたのだろうか。

つらつらと考えるに、彼の祖国英国にないものがあったからだと思う。

以前、上野の国立自然博物館に行ったときに
日本における植物の固有種数が1800種、総種数が5300
という数字があった。

英国はどうかといえば
固有種数160種、総種数1623
という数字で、いかに日本の植生が豊かでバリエーションに富むのかということが分かる。

自分のところにないものだから、プラントハンターなる人が生まれ自国に珍しい植物を持ち帰ったのだろう。

自分のところの植生が豊かであれば、わざわざそんなことはしないはずだ。

今回、各地を回って改めて思ったのは、日本の自然の豊かさ、そして歴史の重さである。

これは日本人として堂々と胸をはって世界に主張していきたいものである。

さて、細かいところで色んなこともあった。

その辺をちょっと脇の話ということでご紹介しよう。

彼らがタタミマットレスにフトンを敷いて寝たいというので、高山にてはそのような宿を手配した。

そもそもは、「5つ星はいらない。でも日本らしいリョカンに泊まってみたいし、フトンで寝てみたい。温泉にもつかりたい。予算の問題もあるので、全旅程のなかに適当にちりばめてくれ。」とリクエストに従ったまでだった。


旅前半の高山は、初フトンだったので反応はまずまずだったが、彼らは心のなかで
「やっぱりベッドが良いな。フトンはもう一回経験すれば十分。」と呟いたフシがあった。

その後は、事前にフィックスしてない晩は極力ビジネスホテルを探すことにした。

こちらとしても個室でひとりになれる方がホッとする。

なにせ、朝から晩まで行動を共にし、寝るのも同じというのもなかなか疲れるものだ。

彼らは基本的に暑がりなので、すぐに部屋の暖房を切る。

僕もそこそこ寒さには強いはずなのだが、彼らほどではなく、上に一枚余計に羽織ったりして寒さを凌いだりした。

朝起きると「よく眠れたかい?気分はどう?」という挨拶をするが、とあるビジネスホテルの個室に泊まった翌朝、2人とも「寒くて良く寝られなかった」という。

ベッドの枕元にある操作盤がすべて日本語表記で、なにをどうしたら暖房がつくのか分からず、そのまま寝たという。

普段やたら暑がるくせに、やはり適度な暖房は彼らにも必要なのだなと分かった。

そして一番は、やはりマンガ喫茶の個室ブースで過ごした4時間。
僕もこんなところに泊まるのは初めてだった。


本棚にはマンガ本がズラーっと並び、ドリンク飲み放題。

夜中に若い人が黙々とマンガを読んでいたり、朝4時に隣のカラオケボックスから歌声が聞こえてくるのを見て、英国人は本当に驚いていた。

でも千数百円で屋根があって、寒くない場所で、足を延ばして休めるというのは有難いと思ったに違いない。

その後、この晩のことが何度も彼らの口から出ていたので、よほど印象に残ったのだろう。

屋久島の宿では、大浴場が地下1階にあった。

我々は3階の部屋からエレベーターで1階に下りて、階段を使って大浴場へ向かう。

彼らの足元を見ると素足だった。
全館絨緞が敷いてあるので、素足でも冷たいことはない。

実はこれはイギリスでは珍しいことではない。

僕がイギリスの園芸学校の寮に暮らしていた時も、皆シャワーやトイレには素足でペタペタ歩いていた。
どうも、これがイギリス式なんだと思われる。

「スリッパくらい履いたら?」
と言えなくもなかったが、彼らも子供でないし、旅の後半ということもあり、もう面倒くさくなってもいたのでそのまま黙認していた。

まぁ誰に迷惑を掛けるわけでもないし、良いかと。

翌日、英国人組が先に風呂に向かい、僕はちょっと遅れて浴室に向かった。

気持ちよく風呂を浴びて皆揃って脱衣所で浴衣を着ていると、ホテルの人が白いビニール袋に入ったサンダルを持って立っていた。

「あの~、このサンダルよろしければ履いてください。」
彼らが裸足なのを見かねて持ってきたようだった。

有難く受け取って彼らに手渡した。

彼らが言うには、部屋から1階に向かうエレベーターで乗り合わせた日本人のおばさんに、何か言われたらしい。

それが、「スリッパを履け」という苦情なのか、「スリッパがないの?」という同情なのか、は分からないが、裸足の足元を指して何か言われたのだという。

彼らは「スリッパが小さくて履けないのです」と答えたらしい。

で、ホテルの人がバカでかいサンダルを持ってきたということらしい。

もう、良く分からないけど頼むよ~。

とにかくこれを履いてくれ、そしてこれを失くさないでくれよ、と説諭した。

そんなやり切れない気持ちをよそに、ハーバードのおじさんは
「こりゃ快適だぁ!!良いなぁコレ!」とバカでかい声で嬉しそうに脱衣所の床の上で早速サンダルを履いていた。

おいおい、まだここで履いちゃダメだって・・・。



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