【悲しき、とんかついもや】
今日は日曜日。
あえて植物関係のない話をしている。
でも、今日は「気まぐれ観察会@代々木公園」があったので、その話をしたいのはヤマヤマだが、ぐっとこらえてあえて別の話を。
これはこれで大切な話であります。
とんかつ「いもや」をご存知か?
飯田橋、神保町、水道橋あたりに、とんかつ屋さんと天ぷら屋さんを数店構えている。
飾りっ気のない素朴さと、庶民的なお値段が魅力だ。
僕はとくに飯田橋のとんかついもやさんに足繁く通っている。
ここは本当にシンプル。
とんかつ定食とひれかつ定食のふたつしかない。
お新香だ、ビールだ、カニクリームだ、メンチだ、なんてものは一切ない。
とんかつ(ロース)とひれかつのみ。
とんかつ定食が750円、ひれかつ定食が950円、ご飯大盛りが50円増し。
それだけ。
値段のわりになかなかのボリューム。
ひれかつ定食なんてひれかつが3切れものってくるので、とても僕には食べきれない。
面白いのはひれかつ定食が供されるのは13時から。
すなわち開店から13時まではとんかつ定食しかないのだ。
これはランチタイムの最も忙しい時間帯を、とんかつ定食一本に絞って効率化を図ろうという作戦であろう。
とにかく席につくと、黙ってとんかつ定食が出てくる。
13時以降だと、慣れた常連さんは待っている間に店主のオジサンに「ひれ」とか「とんかつ」というだけの注文をする。
店はこのオジサンと、その奥さんと思しきオバサンの2人できりもりされている。
この二人のやりとりも興味深くそしてときにハラハラさせられる。
基本的に二人とも無口。
無口なんだけど独り言のようにオバサンがオジサンに苦言めいた何かをボソボソと呟く。
するとやおらムッとしたオジサンが、オバサンにだけ聞こえるような声で反論するのだ。
仲が良いのか、そうでないのか。
いつもハラハラしつつ僕は見ている。
オジサンもちょっと独特の世界観をもっていて、とんかつが揚ってお客さんに出すときに、「はいよー」というような掛け声とともに相手をちょっと指差すような仕草を加えるのだ。
これが最初は不思議というかおかしかった。
カウンターはL字で、11人が座れる。
皆、会話もせずに黙々ととんかつを食べている。
友達と来たって、カウンターの空いたところから順番に座るというのが暗黙のルールだから、必ずしも隣どうしに座れるとは限らない。
どきどき、並んで座りたいなんていう空気の読めない人がいて、店主も常連さんも内心怪訝に思っているに違いない。
こういうお店は回転が命ゆえ、ちゃっちゃっと食事をして席を立つのが正しい。
揚げられるとんかつは香ばしくサクサク。
肉はジューシー。
これでたったの750円ってんだから、とんでもないコスパの良さであります。
ご飯大盛りは有料だけど、キャベツ大盛りはサービスでやってくれる。
まさにてんこ盛りのキャベツが供される。
一時期キャベツの値段が高騰したときも、こちらの心配をよそに気前よくキャベツを盛っていたっけ。
店には入ると揚げ物屋さんらしく油の煙がむんむんとしていて、着ているものなんかはアッという間にトンカツ臭がこびりつく。
なので、汚染されると困るようなイッチョウラは着ていってはいけない。
店に入ってすぐ左に棚があるので、上着は丸めてカバンに入れて、この棚に置けばいい。
メニューは申し上げたとおり「とんかつ定食750円」か「ひれかつ定食950円」のたった2種類しかないのに、店主は会計をしょっちゅう間違えるのだ。
ひれかつ定食(950円)を食べた客に「はーい、750円」なんて言って、客の方から「あのー僕ひれ食べたんですけど」なんてやりとりは日常茶飯事。
その度にオバサンがそっと小声で小言を言うのだ。
とにもかくにもそんな愛すべき庶民派とんかつ屋さんなのであります。
週一とは言わないけど月に2~3回くらい行くかなぁ。
熱く熱くとんかつ屋さんについて語ってしまったが、それには訳がある。
かくも愛すべきとんかつ屋さんではあるが、ナント4月20日で店を閉めるんだそうだ。
なんというショッキングなニュースだろうか。
この前、とんかつを頬張りながら壁に張り出された告知を見て喉がつかえそうになった。
自分が愛して贔屓にしていたものがなくなる。
これは辛いよ。
まぁ、とんかついもやは水道橋にもあるから、そこでも食べようと思えば食べられるけど、微妙に味も違えば雰囲気も違うんだよね。
仕事があって毎日ってわけにはいかないけど、時間が許す限り閉店までの間通って別れを惜しみたいと思っている。
まだ飯田橋とんかついもやに行ったことがない人。
いつ行くの? 今でしょ!!
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