東京理科大学大学院で非常勤講師となった。
よもや理系大学の大学院で講師をやるとは思っていなかった。
イノベーション研究科というところで知的財産専攻のなかの種苗法概論という科目を担当することになった。
僕の担当は後期なので9月から1月までの15週となる。
15回分のシラバスを考えて、それに向けて授業で使うレジュメなどを準備する。
こうやって言うのは簡単だが、実際は想像以上に大変だった。
講演など人前でお話することにはある程度慣れているつもりでも、大学院の講義となるとまったく勝手が違った。
何しろ「種苗法」という法律を、大学院のレベルで教えなければならない。
学生は4年生大学を卒業してきた若い学生から社会人まで。
社会人のなかには弁護士や弁理士も紛れていることがある。
昨年の今頃から準備を始めて以来、重圧に押しつぶされそうな毎日だった。
心のどこかに常にこのことがあって、読みたい本があっても、そんな本を読む時間があれば種苗法に係る資料を読んだ方が良いのではないかとか、休日くらい山歩きでもしたいなと思っても、そんな時間があれば授業の構想を練った方が良いのではないかなど、実際にそうしたかは別としても常に気持ちのどこかに解放されない部分があった。
実はこの「種苗法」を単独科目として扱う教育機関は日本でこれまでなかった。
なので、日本初の種苗法の講義をするという名誉な部分もある一方で、重たい責任も負っていた。
種苗法管轄の農林水産省からも授業の様子をみるために聴講にくることもあり、プロを相手に講義をしなければならないという気の重たさもあった。
でも、明けない夜はないとでもいうべきか、それでもなんとか15回の講義をやり切った。
全て我が人生初めてづくしの15週間であった。
学生たちとは極力同じ目線でいることを心掛けた。
最初はどことなくぎこちなかったけど、最後の方はそれなりに打ち解けることができた気がする。
そして昨日は授業の番外編として、茨城県つくば市にある独立行政法人種苗管理センターの見学に出掛けた。
場所が遠いこともあって面倒くさそうにやってくるのかなぁと思っていたらば、積極的に質問をしたり、写真を撮ったりして愉しんでいる様子をみて感激してしまった。
大袈裟にいうとお恥ずかしながら「感動」してしまったのだ。
おまえら・・・ と言って砂浜を夕日に向かって走りたくなるような、そんな気分とでも申しましょうか。
おまえら・・・ と言って砂浜を夕日に向かって走りたくなるような、そんな気分とでも申しましょうか。
一応先生の立場なので、生徒たちが積極的に種苗法というマイナー分野に興味を示してくれていることが嬉しくて。
数年前、僕がこの大学院の学生であったとき、誰一人として種苗法に興味を持っている人はいなかった。
でもある教授が、「アンタ良いところに目をつけたね。第一人者を目指して頑張りなさい。」と言ってくれた。
そうか、方向性は間違っていないんだと背中を押してもらった気がした。
そして巡り巡って教壇に立つことになったわけだ。
人生とは本当に不思議だと思うし、人の縁というのは本当に有難い。
そんな訳で一年以上苦悶してひとつの山を登り切った。
なんとなくちょっと違う景色が見える気がするし、そのひとつが昨日の学生たち課外授業の楽しそうな表情だった気がする。
4 件のコメント:
お疲れさまでした。
TATEBAYASHIさん熱いですね。
やりきった感が伝わってきました。
今度は又どんな新しいことに挑戦するんでしょうか、楽しみにしています。
totoさん
コメント有難うございます。
なんか最近は歳のせいか、妙に感激したり、涙もろかったりするんですよね。
新たな山の頂をめざして頑張ります!
いつも、楽しみに読ませていただいてます。
とても、充実した講義だったことが、想像できます。お疲れ様でした。
種苗法という、ちょっと難しそうな分野で、興味はありますが自分には関係ないかな?と思っていましたが、イチゴのお話で、グッと身近に感じました。
最近、「モンサントの不自然な食べ物」という面白そうな映画を発見し、観たいなと思っているところなのですが、ご存じですか?遺伝子組み換えの作物についてのドキュメンタリーなんですが。「タネ」についていろいろ考えると
つきるところがありません。
tomacoさん
コメント有難うございます。
種苗法を身近に感じていただけたとのこと。
それなんです、目指しているのは。
難しいことをもっともらしく言うのではなくて、難しいことを分かりやすく伝えるというのは自分の中での大テーマです。
モンサントはいろいろと話題に事欠かかない会社ですね。
映画のことは知りませんでした。
今度観てみます。
情報を有難うございます!
コメントを投稿