朝起きると昨日の風雨が嘘のように晴れ渡っていた。
どういう訳か目が冴えてしまって、朝4時くらいに布団から起き出てパソコンを抱えて一人ホテルのロビーで仕事をしていた。
6時には大浴場が開くので、ゆったりとお湯につかって英気を養った。
部屋に戻ると部屋の浴室から歌声が聞こえてきた。
どうやらボスが英国式の入浴を楽しんでいるようだった。
飛行機の兼ね合いもあって、8時のバスに乗ろうではないかという話になっていた。
朝食をとりながらボスは昨日撮った写真のうち、一か所はなんとか歩いて行ける場所なので、今日せっかく晴れたところで写真を取り直したい、という。
荷物を任せるからバス停に待ち合わせで良いか?
というので、もちろん良いよと答えたが、すでに7:20をまわろうとしていた。
今から行ったんでは間に合わないんじゃぁないのかなぁ、と思った。
そのくせして、呑気にトーストを齧りながらコーヒーなんかすすっている。
急がないと間に合わないと思うよ、というとやっと腰を上げて出て行った。
ホテルの部屋に忘れ物がないか確認し、チェックアウトをしてバス停に向かう。
8時ちょうどにバスがやってきたが、ボスの姿はない。
そのバスを見送った。
やがて5分ほどして、息を切らせてボスが汗だくでやってきた。
「思ったより遠かった・・・・」
言ったでしょ、結構距離があるって。
ということで慌てず次の8:40のバスを待つことにした。
こういうことがあろうかと、彼らには一本早めのバスを知らせてあったのだ。
とは言ってもまったく余裕があるというわけではなく、9:40の飛行機で、このバスに乗ると空港には9:03に着く予定だ。
まずまずギリギリの線。
またしても一発渋滞があったらオシマイの世界である。
でも旅が進につれてこちらも段々大胆になってきた。
ちょっとのことでは動じない。
無事に空港に着いて皆に航空券を手渡す。
チェックインしたのち、手荷物検査を受けようというときにひとりが
「しまった、ナイフをリュックに入れたままだ。」と言う。
このままでは、手荷物検査時に没収となってしまう。
諦めるにはやや高価なナイフだと言う。
仕方なく、一旦手荷物検査の列を離れてチェックインカウンターで別送の手続きをとる。
航空券は数か月前に手配して自分が持っていたものだが、これを道中ずっと保管し空港で皆に手渡したり、さまざま発生する問題事に速やかに対処するあたり、ツアーコンダクターの境地である。
しかもただのツアコンではなく、かなりデキるツアコンの部類ではなかろうか。
鹿児島で飛行機を乗り継いで、東京へ。
羽田に12:30ころ到着。
ここまでは、ほぼスケジュール通り。
この後にまたドラマがあった。
ボスたちが日本に着いた11月17日は珍しく土砂降りの雨だった。
雨のなか、麻布十番の善福寺にあるイチョウを見に行ったのだが、雨で薄暗くいい写真が撮れなかった。
ボスはなんとしても今日の午後に再度善福寺に行ってリベンジしたいというのだ。
まず羽田からリムジンバスに乗って都内に入って、ホテルで荷物を預けて、そのまま地下鉄を乗り継いで麻布十番をめざした。
一縷の望みをもって善福寺へ急ぐ。
厚い雲が垂れ込め、晴れてはいないが雨も降っていない。
ポイントはふたつあって、そこそこ明るい時間に到着したいという点、そして願わくばイチョウが黄金色に色づいていること。
17日はまだ葉がかなり青かった。
ここを曲がれば、善福寺のイチョウが見えるという角を曲がった・・・。
ボスが YES!! といってガッツポーズをした。
イチョウは見事な黄金色に輝いていたのだった。
ここでまた憑りつかれたようにシャッターを切る。
本件にはあまり関係のないハーバードのオジサンも一緒にシャッターを切る。
でもまんざら関係がないわけでもなくて、彼はイチョウの専門家でイチョウの研究で博士号をとった言っていたから、彼は彼なりに興奮していたんだと思う。
なんとか目的を達して、ホッとしている時間はない。
急いで来た道をホテルに戻る。
4人して英国王立園芸協会(RHSJ)さんのパーティーに御招待いただいていたのだ。
シャワーを浴びて、着替えをしてそそくさと地下鉄に乗り込んだ。
パーティー開始時間にはちょっと間に合わなかったが、どうにか到着することができた。
このパーティーのお話を頂戴して、この旅が始まってから、果たしてこの席に無事にたどり着けるのだろうか、と本当に疑問だった。
でもこうして4人揃ってパーティー会場にいる。
奇跡みたいなもんだ。
屋久島のホテルでの朝食以来、何も口にしていなかったので、4人ともガツガツとしてしまった。
ビールもワインもすすんだ。
パティーを終えて向かったのは大丸デパート。
家族へのお土産などを買うため。
今まで突っ走ってきたので、家族への買い物なんかしている暇はなかったものなぁ。
閉店時間を過ぎても、なかなかデパートを立ち去れなかった。
百貨店っていうだけあって色んなものがあるし、イギリスにないようなものが沢山あるものなぁ。
彼らのホテルに戻ったのはもう10時を過ぎていた。
ハーバードのオジサンはパーティーでワインを飲み過ぎたといって部屋に早々に消えていった。
英国人ふたりと僕の3人で、近所の居酒屋で祝杯をあげた。
14日間、さまざまな困難があったけど、なんとかそれを乗り越えて目的を達した仲間という不思議な連帯感があった。
仲間だなんて不遜もいいところで、ボスはキューガーデンでは誰もが一目置く大御所で、僕もキューにいたときはかなり緊張してボソボソと話したものだ。
それがこんな不思議な旅を通じて、近しくなれるなんて思いもしなかった。
というわけで、日本最後の夜、旅最後の夜は更けていった・・・
3 件のコメント:
お疲れさまでした~
吉谷桂子さんのブログでRHSJのパーティーの画像を見ていましたがおばさんと園芸雑誌で見る人が映っていたのでそういうパーティーなのかと思っていましたがそんな偉い人も招かれているパーティだったのですね。
旅が終わってしまい、毎日のブログの更新を楽しみにしていた私は至極残念です。でもふだんのブログも勉強になり興味深いですけど。
お疲れさまでした。
波乱万丈の旅も無事に終えられたのは、ひとえに先生の素晴らしい、かいがいしいアテンドがあればこそですね。
(そして強運というか、運を呼び寄せるパワーというか^^)
終わってしまうのが、なんだか寂しい気がいたします。
あまりにドラマティックで(^_^;A
パーティーの写真、素敵です♪
totoさん Mari sissiさん
コメント有難うございます。
事実は小説よりも奇なり、を地でいくような感じの2週間でした。
後日談もありますので、あと数日お付き合いください。
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