突然ですが、アナタがこのサクラの枝を切るとしたらどこをどうやって切りますか?
切り落としたいのは二股に分かれた左の枝です。 そんなの簡単、左の枝をスパッと切れば良いんじゃないの?
それはそうなんだけど、ちょっと覚えておいていただきたい話をちょっと今日はしてみようと思う。
もし、切りたい枝の根元で「1発」で切ったとしたらどういうことが起こりうるか?
スパッと枝が切り落とされるちょっと前に、枝の重さで最後の瞬間に木の皮がめくれて剥けてしまうかもしれない。
言葉で説明すると難しいので写真を見ていただきたい。
左のように切っていくと、メリメリっと切り落とす前に皮が剥けてご覧のような傷ができてしまう。
ここからバイ菌が入り込んで取り返しのつかないことになることもある。
ではどうするか?
「3ステップ・カット」「1・2・3カット」など色んな呼び方があるけど、「3段階」で切る。
①まず切りたい部分よりも離れたところの枝の下側に切り込みを入れる
②その1センチくらい上で枝を切り落とす。 ①で入れた切込みによって皮がめくれて剥けることはない。
③切りたい最善の場所で切る。 このときには皮は剥けない。なぜなら皮が剥けてしまう原因は枝の重みにあるから。その重みを②までで取り除いてやれば皮は剥けない。単純明快。
で、いよいよ枝が二股に分かれた根元で切るのだけど、ここでも注意が必要だ。
ⅰ)根元ギリギリで切ることをフラッシュ・カットというのだけど、こうすると木が再生しない。木は切られた傷口をカルスという細胞で覆うことで自らを治癒させるのだけど、あまり「きわ」ギリギリで切ってしまうと、このカルスを作り出す場所にもダメージを与えて再生しないのだ。
ⅱ)では、逆に②の手順のあとに何十センチも枝を残したらどうなるだろうか?そうすると、この枝が腐ってくる可能性がある。腐った枝はその範囲を徐々に広げてついには木全体が枯れこむ恐れがある。写真の切り残された枝は見事に腐ってしまっている。
そんな訳で3ステップカットで枝の重みを取り除いて、一番良い場所で切ってやる というのが木を切るときの最善の選択といえる。左が②のステップを終えたところ。自然とこういった切り口になる。右は最後の一切り(ファイナルカットと言う)。切れ味のいいのこぎりでスパッと切ってやる。
プロの植木屋さんでもこれをチャンと知っていて守っている人はそんなにいないかもしれない。
知っていてもやらない人がいるかもしれない。何故なら、一発で切るよりも手間が掛かるから。手間が掛かればそれだけ時間が掛かる。街路樹を限られた時間で切っていかなければならないような場合、そこまで手も気も回らないのは仕方のないことなのかもしれない。
街で傷を負った木を見るとちょっと胸が痛む。
こういった理論とテクニックを教えてくれた英国の先生は、キチンとしたセオリーで剪定されていないというのは一種の破壊行為(vandalism)だ、と熱弁していたのを思い出す。
因みにこの理論は現代樹木学の父と言われるアメリカ人、Alex Shigo が世に広めた。
いまや全世界のスタンダードとなっている。
左はチェーンソーで一発で大きい枝を切られたのだろう、皮が剥けて傷を負ったクスノキ。
右は傷をカルスで覆って、再生する途中のクスノキ。 あと数年で傷が完全にふさがる。
いい仕事をしてるかな、この植木屋は?と判断する材料になる。
2 件のコメント:
なるほど勉強になりました。今まで私は、際で切ったほうがわき目が出やすいと思っていたんです。少し残したほうがいいんですね。植物にやさしくしたいです。
非常にデリケートな問題を書いたので、伝えるのが難しいのですが、「ちょっと残す」といえば、そうですし、そうでないとも言えます。下から2段目の右の写真を見てください。
あの位です。
どの程度なのか、追加でアップします。
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