太く生きろ
ご覧の樹は何の樹だかお分かりになるだろうか?
上の葉のミドリが生い茂ったのが夏の姿。
下の落葉したのが冬の姿である。
そう、さんざん花咲ブログで取り上げてきたイチョウである。
それにしてもこの一対のイチョウは立派だ。
多分、過去に一度樹の真ん中あたりで伐採されて、そこから新たに芽を吹いて現在に至っているようなカンジが樹形から伝わってくる。
鳥居が正面にあって急な階段を登った場所に2本のイチョウ。
おそらくこれはオスとメスのイチョウで「夫婦イチョウ」なのだろう。
さて、今日御注目いただきたいのはこの幹の太さ だ。
業界では人間の胸の高さ、地上から概ね120センチあたりの幹の太さを測ることを基準としている。
このイチョウは胴回りが4メートルくらいはゆうにありそうだ。
幹が太くて立派だ。
幹が太い・・・・ で思い出したことがあった。
植木屋の親方の手伝いをするときに、ときどき若い職人のW君と一緒になる。
彼は若いが腕は確かで、仕事も速く、一人親方として頑張っているナイスガイである。
お茶の時間に色んな話をしていて子供の話になった。
「何ていう名前なの?」
「幹が太いって書いて幹太です」
そのとき僕は単純に思った。
「植木屋の子供の名前が幹太・・・ステキじゃぁないの」と。
カンタって名前でも呼びやすいカンジがするし、太く生きろよって親父の願いが伝わってくるではないか。
別の日にまた幹太くんの話になって、僕が聞いた。
「幹太くんはお父さんの職業とかもう理解してるの?」
するとW君は
「ええ、最近は色々分かってきてるみたいで、お父さんの仕事は木をキレイにする仕事なんだよね、って言うんですよ」と教えてくれた。
ここで再びシビレてしまった。
木をキレイにする仕事・・・・ なんかとてもステキな仕事ではないか。
植木屋の仕事を説明するのに「木をキレイにする仕事」というのは、なんともロマンを感じるのは僕だけだろうか?
「ええっとですね、お父さんの仕事はですね、不良債権をですね・・・」 確かにそれも大切な仕事であるが、子供には分かりにくい。
W君は続けた。
「この仕事で一生食っていこうと腹を決めたときに、丁度生まれた子供なんスよ。で、ちょっとその決意みたいなもんを込めたのが幹太という名前なんです」
「おいおい、良い話だなぁ」と涙腺が弱い僕はちょっとホロッときそうになった。
オレが家族を植木屋として養っていくんだという決意に満ちた彼の腕は確かに太くてゴツかった。
3 件のコメント:
植木屋さんと美容師さんは同じだなあと以前から思っていました。幹太くんのパパもその志から素晴らしい植木屋職人になることでしょう。
子供の名前にはい様々なストーリーがあるけれど、今日はほっこりするお話をありがとうございました。
なんと、幹太くんのお母さんは元・美容師だったそうです。 これぞ運命なのでしょうか。
それは!すごいつながりですね。
幹太くんは将来トリマー(動物のヘアカット)になったりして(笑)
「切る」という作業は判断力や潔さ、迷いのなさが勝負。そういうお仕事に携わる方はバランス感覚もあり、生き方もスパッとしている印象があります。
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